紆余曲折を経て、前身となる住宅販売会社を立ち上げ
――まずはリフォーム業界に興味を持ったり、ダイキョーを立ち上げたきっかけを教えてください。
会社を立ち上げたのは、それまで勤めていた会社を退職したのがきっかけですね。
高校を出て、最初は海産物の乾物屋に入社したんです。6年務めたんですが、景気が良くなったのをきっかけに、その仕事を地味に感じてしまったんですよね。(笑)
それで違う職種にも興味が出てきまして。不動産と旅行で迷ったんですが、不動産の会社に入りました。そこで1年勤めて。
その後、今のダイキョーの前身となる、「大協ハウス」という会社に拾ってもらったんです。8年くらい勤めて、不動産と建築の仕事をやらせてもらいました。その時の経験がもとになっていますね。
その後景気が悪くなってしまって、居場所がないように感じて上と喧嘩しちゃって。(笑)それが退社したきっかけですね。でもせっかくここまで色々覚えたので、自分で会社を立ち上げました。
――行き違いが元で退社されたんですね。その時の気持ちっていうのは、どんな感じだったんでしょうか?
いやもう、どうしようかなと思って。(笑)
よしやるぞって感じではなく、正直困ったなって感じです。つい短気を起こして会社を退社しましたけどね。
――スタート時は営業先もすべて新規獲得しなければいけないような状態でしたか?
今まで勤めてた会社の名前をもらってスタートしたんです。販売会社をさせてくださいってことで。会社を退社した翌日には戻って頭を下げて、事務所の一角に机を借りて「大協住販」という会社を作って。
「大協ハウス」の販売会社という形で首の皮一枚つなげてもらってね。1年半ぐらい事務所使わせてもらいました。
その後、平成12年に事務所を青柳に建てて。それが本当の独立になりましたね。
不動産から水道屋、そしてリフォームへ。転換を重ね成長
――不動産からリフォームに転向したきっかけを教えてください。
当時水道屋に勤めている従妹がいて、今は下水道工事が景気がいいという話を聞きました。
畑違いではあったんですが、急きょ配水関係の資格を取って、水道の工事を始めました。その時は自分でお客さんのところを回って注文を取りました。
下水道工事を通じてお客さんと交流を持つうち、リフォーム全般に需要があることを知り、リフォームを通じて会社を伸ばして行けるのではという漠然とした想いがありました。
――下水道工事というと裏方というイメージが強いですが、リフォーム全般になってお客さんとのつながりも変わりましたか?
下水道工事を10年間一生懸命やって、2000軒くらいお客さんを増やすことができたんです。
反面「下水のダイキョー」というのがお客さんに印象付いたことで、家全体のリフォームの仕事をスタートしても、受注までたどりつけないというのが悩みでした。
下水からトイレ関係の仕事は結びつき易かったんですが、そこからお風呂・キッチンと話を広げても「でも下水道屋さんなんでしょ?」って。(笑)
だから、下水からリフォーム全般への軌道修正は思っていたより難しかったですね。
――具体的にはどのようにイメージを変えていきましたか?
その苦しんでいる時代に、運よく師匠と呼べるような人と出会いがありました。こちらから弟子入りして、様々なリフォームのやり方を教わることができたんです。
お手本を教えてもらうことで、それに当てはめていくようなやり方で、なんとかリフォーム全般に舵を切ることができましたね。
――リフォームはお客さんとのコミュニケーションが多いと思うのですが、やりがいや新鮮さ、大切にしてきたことを教えてください。
下水道の時の気遣いでは通用しないという最初の壁がありましたね。でも、お客さんと仲良くなれれば、頼りにしてくれるので、その嬉しさとやりがいを感じました。
そしてお客さんを裏切らないということを大切にしましたね。がっかりさせない・悲しませないというのは、最初から自分にも社員にも言ってきました。
――お客さんを大事にする上で、具体的にはどのような努力をしてきましたか?
「約束を守る」ということですね。今でも小さな約束でも守るというのを徹底しています。
――今までで、特別印象に残ったエピソードはありますか?
下水道の仕事をしてた時代、何度も何度も営業に通ったお客さんが、ご近所10軒くらいまとめて仕事を依頼してくれた時ですかね。泥臭いやり方でしたが、それはそれは嬉しかったですね。
リフォームを始めてからのエピソードですと、それまでずっとお客さんのところに通って注文を受けるスタイルで仕事をしてきたのが、ショールームを作ったことによってお客さんの方から来てくれるようになったんです。嬉しくもあり、驚きでもありましたね。
――答えにくいかもしれませんが、受けたい仕事、受けたくない仕事はありますか?
基本的には対応できる仕事であればなんでも受けるというのが信条ですね。
ただ、中にはとにかく値段を安くしろという一辺倒のお客さんもいて。あまりにも酷くて社員が対応しきれない時は、社長の仕事として断らせていただくこともありますね。
――どのように断るのでしょうか?
できるだけやんわりと、「当社ではお客様のおっしゃるようなレベルでは対応しきれない」という、一般的な切り出しですね。それでもどうしようもなく話が通じないお客様とは言い合いになることもあります。(笑)
社員にそこをやらせてしまうと消耗してしまうので、そこは社長としてちゃんと対応するようにしています。
人柄が最重要項目。技術は後からついてくる
――社員さんをあまり管理していないというか、のびのびやらせているという印象があるのですが、どのような考えで行っているのでしょうか。
性分ですかね。(笑)自分はメリハリをつけて仕事したいと思っているので、みんなそうなのかなと思っているところがありますね。
数字さえちゃんと出してくれて、自分で考えて動いてくれるなら、多少コンビニで寝ててもいいかって。(笑)
自分一人ですべての仕事ができれば社員は雇わないですが、そんなわけにはいかないので。
もちろん数字が悪ければ、注意しますが。
――どんな人を入社させていますか? また、どんな人が長く勤めているのでしょうか。
最初は私が面接をしてたんですが、今は人事のリーダーにやってもらっています。
どんな人を入れたらいいですかって聞かれたので、みんながこれから一緒に長くやっていけると判断できる人を入れてくださいって。技術とかは後から覚えていけばいいので。
だから社員同士仲がいい。気心とか波長が合う人が多くないと、どうしても無理が出てくるし、他のことにエネルギーを使うことになるので。
とにかく、うちの社員は一言で言うとお人よしが多いんですよ。(笑)頼まれたら、「はい、なんとかします」と言うような。
――逆にどんな人はダイキョーに合わずに辞めて行ってますか?
みんなとうまくやれなかった人ですかね。うまくやるために、ちょっとした我慢もできない人と言うか。
人には言ってはいけないということを言ってしまうとか、一言余分だったりとか。
基本的には自由にやってもらっていいんですけど、自由にやるためには、自分で居心地のいい場所を作ってもらわないと。そういうのはお客さんとの間でもあるので。
結果的に辞めてく人は、そういうところがうまくできなかった人なんですかね。
――どのような人をリーダーに抜擢しますか?また、どのような人を評価していますか?
1つ1つの部署は4、5人なので、ぐいぐい引っ張れるリーダータイプというよりも、人のために動けるような献身的な人をリーダーにしています。メンバーのことを思って、面倒見れる人というか。
評価についてはそれぞれですけども、やっぱりまずは一生懸命動いて、数字を上げる人ですかね。
――吉澤社長が社員に対して、絶対に曲げないところはどんなところでしょうか。
自分の主張を通すために、周りを傷つけちゃうとか、そういう雰囲気を感じた時には注意するようにしています。
――吉澤社長から見る副社長はどのような人でしょうか。
副社長とはゴルフの練習場で出会いました。入社前はゴルフのツアープロをしていたんです。
お互いこんなに長い付き合いになるとは思っていなかったと思いますが、起業して1年目にお試しって形で入社してくれてから、気づいたらずっと一緒に仕事してくれています。
最初は二人で下水道の営業に回っていたんですよ。彼はマネージメント力が高くて、ずっと営業面で支え続けてくれました。
とにかく結果を出してくれるところに惚れています。だから本当、副社長だけは特別ですね。
一言で言えば、相棒。お互いにあまり口は出さずに、いい感じでバランス取れてると思います。
――社員さんそれぞれがブログを何年間も続けられているそうですね。継続するために行ってきた具体策などあれば教えてください。
何か1つでも2つでもいいので、会社として長く続けているものがあればと思って続けてきました。社員には一貫してブログを続けるように言っています。
もう一つ、グループ内でブログのチェッカーを週替わりで任命しているんです。そして誰かが書かなかったりするともう1週間チェッカーをしなければならないルールに。チェッカーの仕事は大変なので、連続ではやりたくないから、書かない人がいたりすると、ちゃんと注意してくれるようになる。
このルールはいろんな人からの助言を受けて、そのようにしてます。他にも、掃除とかイベントの実行委員とかも同じで、交代制にしています。
出会いが、会社を成長させてきた。ダイキョーの未来
――年商と社員数について、現状と目標を教えてください。
現在の年商は4億5,000万。社員は今20人くらいです。
理想は、社員30人に対して、年商10億ですね。そうしたら、社員全員の給料を今よりもっと良くできますし。
――年商を2倍にする具体的な方法などは考えているのでしょうか。例えばこんなサービスを提供したいとか。
社長の仕事として当然、新たな利益を生む仕事を探していかなければいけないですね。
今はリフォームと一部不動産もやっていて、今までももちろんお客さんを大事にしてきましたけど、より長くお付き合いするための方策とサービスの提供を考えています。詳しくはまだ秘密ですけど。(笑)
長く付き合うというのは社員も同じで、パフォーマンスが続く限りは長くいてもらいたいと考えています。ベテランの力は絶大だと思っているので、大事にしたい。
――会社の知名度としては、どのくらいの範囲まで広げたいと思いますか?
前橋中心にと考えています。
もっと営業所を出そうかなという気持ちもあったんですが、あまり広がりすぎてしまうと自分の性分的に管理しきれないと思うので。地元で負けない企業という感じにしたいと思っています。
――吉澤社長自身が目標としている、または好きな経営者とかいますか。
ホンダの藤沢武夫とか。本田宗一郎よりも藤沢武夫が好きなんですよ。裏方の仕事をしている人。
自分も本当は表に立つとか、目立つことはあまり好きではなくって。
人が好きなんですよ。
みんなが嫌いというような人とも、付き合ってみたりする。(笑)どうして嫌われるんだろうって、興味がわきます。
――すべての現実的なことは抜きにして、今の会社の縛りも忘れて、吉澤社長が今からはじめたい、目指したいものとかあれば教えてください。
人間だとあまりうまい例えがでてこないんですが、強いて言うならゴリラのボスみたいなスタイルの生活ですかね。(笑)
ゴリラのボスって、普段は何も仕事しないんです。何もせずに好きなものを食べて、体力を貯めておく。そしていざ問題が起こったときは、群れを守るために脅威に立ち向かう。
そのくらい時間をゆったり確保して、いざという時に備える。そんな風にやってみたいなっていうのは思います。
――最後に聞かせてください。吉澤社長にとって、ダイキョーは一言で言うとなんでしょうか。
家族ですね。自分に子供がいないっていうのも影響してるかもしれないんですが。
みんなと割と歳は近いんですけど、例えるなら娘とか息子とかの関係に近いというか。お互いに足りないところもあって、でもそれはその人の持ち味って感じ。欠点がある人がいれば、他の人がカバーするという構図も、家族に似てますね。